【成功例解体】の5人目。今回はアレックス・ホルモジー。

80本ぶんを索引にして上から読んだ。この人の主張は、俺がこのブログでずっと書いてきたことと正面から衝突する。 だから今回は、その衝突をそのまま書く。


何をやっている人か(事実だけ)

アメリカの経営者で、会社を買って伸ばす仕事をしている。もともとはジムを経営していて、その運営ノウハウを他店に売る事業から広がった。いまは投資先の会社に入って成長を手伝う会社をやっていて、発信はそのついでにやっている。

日本の副業系の発信と決定的に違うのは、「稼ぐ側の実務」から話していること。売る側の理屈を、売る側の立場から説明している。


いちばん引っかかった主張

この人は、はっきりこう言っている。

節約でたどり着ける上限は「全部貯める」までしかない。稼ぐ側には上限がない。

貯める話は効率の問題で、稼ぐ話は量の問題だ、という言い方をしていた。どれだけ切り詰めても、入ってくる量が小さければ時間がかかりすぎる、と。

俺はこのブログで固定費解体という連載をずっと書いてきた。契約を切る、使っていないものを止める、なんとなく続いているものを1つずつ潰す。その連載の主語を、この人は真っ向から否定している。

正直、読んだとき手が止まった。


構造に分解する

反発する前に、この人が何を言っているのかを分けて読んだ。3つあった。

① 「不労所得」は、あなたにとって不労なだけ

いちばん効いたのがこれだった。

あなたにとって受け身であるものは、誰かにとっては働きだ。

受け身か働きかは0か1かではなく、地続きの線だ、という言い方をしていた。線のどこに自分が立っているかの話であって、「働かなくていい側」という場所は存在しない。

これは、「不労所得」という言葉で何かを売られたときの、そのまま使える物差しになる。

「これは誰がやっている労働なのか」——これが答えられない話は、労働が消えたのではなく、見えなくなっているだけだ。だいたいの場合、消えたように見えている労働は、買った側が引き受けることになる。

② 語られる順番が、実際の順番と逆になっている

この人が一行で言い切っていた。

誰も受け身の収入で豊かになってはいない。まず働いて稼ぎ、そのあとで受け身に変わり、そしてそのあとで語り出す。

語り始める時点では、順番がひっくり返っている。 発信で見えるのは最後の段階だけで、その前にあった長い期間は画面に出てこない。

この連載でずっと書いてきたことと同じ形をしていた。成功例は、いちばん再現しにくい部分が省略された状態で出てくる。

③ 「あなたのせいじゃないかもしれないが、あなたの問題だ」

この言い方が正確だった。

それはあなたのせいではないかもしれない。でも、あなたの問題ではある。

責任と当事者を切り分けている。 誰が悪いかの話をやめて、誰が解くのかの話に移している。

俺がこのブログで「敵は人ではなく構造だ」と書いてきたのと、着地が同じだった。構造のせいだと分かったうえで、動くのは自分だ、というところまで含めて同じだった。


前提条件(真似できない部分)

「稼ぐ側は上限がない」が成り立つのは、収入を上げる手段が実際に開いている場合だけ。

この人は例として、同じ仕事で会社を変える、勤務地を変える、リモートで条件のいい会社に移る、という話をしていた。アメリカの労働市場の話で、日本の会社員がそのまま同じ角度で動けるとは限らない。移れる人と、いま移れない人がいる。

もうひとつ。この人は「稼ぐ」を人生の中心に置いている人だ。それが向いていない人に同じ設計を当てても、うまくいかない。この人自身も、休んで浜辺にいる生活を経験した人たちが「自分には合わなかった」と言うのを何度も見た、と話している。合う合わないの話を、能力の話にすり替えないほうがいい。


俺が持ち帰ったもの

固定費を削るのをやめる気は、まったくない。

理由は、この人の主張と俺の連載が、そもそも解いている問題が違うからだ。

稼ぐ量を増やす話は、うまくいったときに効く。固定費を削る話は、うまくいかなかったときに効く

俺が固定費を書いているのは、貯めて豊かになるためじゃない。入ってくるものが止まった月に、生活が止まらないようにするためだ。クビになった経験がある人間にとって、これは節約の話ではなく、選択肢の話になる。

そのうえで、持ち帰るものが1つだけあった。

固定費を削ることには終わりがあるが、稼ぎを増やすことには終わりがない。

削る作業は、いつか削るものが無くなる。だから削り切ったあとも同じ場所で削り続けているなら、それは別の作業から逃げているのかもしれない。ここは自分に返ってくる指摘だった。

順番として、こう置いた。

削るのは、最初にやる。増やすのは、そのあとずっとやる。

削るのが先なのは、削ると動ける状態になるからだ。毎月出ていくものが小さいほど、条件の悪い仕事を断れるし、時間を空けられるし、失敗しても死なない。削るのは目的じゃなくて、増やすための足場だった。

そう置き直したら、衝突はしていなかった。


次回

【成功例解体】は続きます。全部見たうえで書ける人からやります。

人気記事(おすすめ)