【成功例解体】の8人目。今回はDan Martell(ダン・マーテル)。

「AIで稼ぐ方法」を出している人だ。このジャンルは、俺がいちばん警戒している場所でもある。60本ぶんを索引にして読んだ。

結論から言うと、この人からいちばん持ち帰れたのは、稼ぎ方じゃなくて、判定のしかたのほうだった。


何をやっている人か(事実だけ)

カナダの起業家で、ソフトウェア事業を作って売った経歴がある。いまは事業に投資したり、経営者向けに指導したりしている。発信のテーマは、事業の作り方と、AIの実務での使い方。

「AIで稼ぐ」という、いま最も人が集まっているテーマで出している。


いきなり自分のジャンルを撃っている

この人が、動画の冒頭でこう言っていた。

毎日、山ほどの人がAIでの稼ぎ方を教えている。その大半は中身がない。ほとんどはAIで一銭も稼いでいない。

自分がいるジャンルの中で、自分のジャンルを撃っている。

前にバンクアカデミーの記事で、「今はやらない」と言った回があるかを見るという基準を書いた。この人の場合はもっと強くて、いま最も人が集まっている手法を、自分でいちばん下の評価に置いていた。

具体的には、「顔を出さずにAIで動画を量産するチャンネル」を最低ランクにしている。理由は3つ挙げていた。プラットフォーム側がAI生成物を評価しない/作れる人が多すぎる/ブランドも視聴者との関係も残らない。

この手法は、いま検索するといちばん出てくる種類のものだ。 それを、同じジャンルの発信者が最低ランクに置いている。ここは見る価値があった。


持ち帰った武器:3つ目の軸

この人は、稼ぎ方を14個並べて、全部を3つの軸で採点していた。

  1. どれだけ払ってもらえるか(収益性)
  2. どれだけ人がいるか(競争)
  3. どれだけ持つか(寿命)

問題は3つ目だ。 ここが、他ではあまり見ない。

普通この手の話は、1と2で終わる。稼げるか、混んでいるか。でもこの人は「これはいつ消えるか」を必ず最後に置いている。

そして実際、その軸で結論がひっくり返っている。ある手法について、「稼げるし、いま需要もある。でも道具側が勝手にやるようになるから、窓は狭い」という理由で評価を下げていた。稼げるのに、下げている。

これはそのまま使える。

副業でも、事業でも、「いま稼げます」は入口の話でしかない。「これは何年もつのか」を聞かない限り、判断は半分しかできていない。 そして厄介なことに、寿命が短いものほど、いま稼げているように見える。人がまだ流れ込んでいる最中だからだ。

だから物差しを1つ足す。

「これ、3年後もありますか」

答えが返ってこないなら、それは稼ぎ方ではなく、いま開いている窓の話をされている。窓は閉まる。閉まったあとに何が残るのかまで聞いて、初めて判断できる。


もう1つ:作る前に売る

この人が繰り返し言っていて、実務的だったのがこれ。

作る前に売れ。

先に買う人を見つけて、その人に聞きながら作る。順番を逆にしない。

これは当たり前に聞こえるが、逆をやる人のほうが多いと思う。作っている間は前に進んでいる感じがするし、断られないからだ。売りに行くと断られる。だから人は、断られない側の作業に逃げる。

前回の記事で「インプットは考えることの代わりにならない」と書いたが、これも同じ形をしている。作る作業は、売る作業の代わりにはならない。


見ておいたほうがいい構造

これは批判ではなく、見る側が知っておくと得をする話。

この動画の途中に、無料の資料を配る案内が入っていた。受け取るには、SNSで本人に直接メッセージを送る形になっている。

これ自体は普通のことだ。ただ、構造としてはこうなっている。無料の資料は、連絡先を交換するための入口になっている。それが悪いわけではない。ただ、知って受け取るのと、知らずに受け取るのとでは、そのあとの見え方が変わる。

物差しは前と同じでいい。紹介や配布が置かれている場所と、本人の判定が書かれている場所を、分けて読む。 今回の回で言えば、判定のほうは自分のジャンルの人気商品を最低ランクに落としていた。配布に引っぱられていない。


前提条件(真似できない部分)

この人は、すでに売り先を持っている側の人だ。

事業を作って売った経歴があり、投資先があり、指導している相手がいる。新しいことを始めるときに、最初の顧客を探す必要がない。 「作る前に売れ」が成り立つのは、売りに行ける相手がすでに見えている場合だ。

さらに、この人が最上位に置いていた手法は、その分野での実務経験がある人向けだと本人も言っている。「AIで稼ぐ」と聞くと、何も持っていない状態から始められる話に見えるが、上位に置かれているものほど、前から持っているものを必要としている。

だから、これから始める人がこのランキングをそのまま使うと、順位は変わる。自分がすでに持っているものを先に数えないと、この表は読めない。


俺が持ち帰ったもの

「いつ消えるか」を、必ず3つ目に聞く。

俺はこれまで、稼げるかと、混んでいるか、の2つで見ていた。そこに寿命の軸を足すと、判断がかなり変わる。いま流行っているものほど、この軸で落ちる。

そしてもう1つ。

自分のジャンルの人気商品を、自分で否定できるか。 これができる人は、少なくとも「入ってくる人を増やすこと」だけを目的にしていない。前の記事で書いた基準と、また同じ場所に着いた。

8人見て、信用できると思った人は全員、自分の側の分が悪くなる話を、自分から出していた。 サラタメさんは失敗した企画を、マコなり社長は自分の職業を、バンクアカデミーは買っていない状態を、Ali Abdaalは成功習慣の代償を。

共通していたのは、手法ではなくこれだった。


次回

【成功例解体】は続きます。全部見たうえで書ける人からやります。

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