【成功例解体】の3人目。今回はサラタメさん。
会社員向けに本の要約をしている人で、読者層が俺のところといちばん近い。だから丁寧に見た。
結論から言うと、いちばん学びが大きかったのは、本の要約の回じゃなかった。「撤退します」という回だった。
何をやっている人か(事実だけ)
難しいビジネス書を、かなり乱暴なくらいざっくり要約して、会社員向けに話す。ホワイトボードのアニメーションに一人語りを乗せる形式。
読者は本人いわく「25歳から34歳の若手プレイヤー層」が中心。ブラック企業からホワイト企業への転職を経験していて、その立ち位置から話している。
構造に分解する
見ていて、この人の強さは3つの組み合わせだと思った。
① 要約を「粗く」やる
本人が自分の強みをこう言っていた。
難しい書籍でも、ざっくりすぎるくらい、怒られるくらいざっくり要約してしまう。
丁寧にやらない、を強みとして自覚している。要約系は「正確に伝えよう」とするほど原著の劣化コピーになる。粗くするから別物になる。
② 自分を凡人側に置く
若手起業家に密着する企画では、相手を持ち上げるのでも批判するのでもなく、「凡人の私には理解できない」という位置から見ている。ずっとこの位置を崩さない。
だから会社員が読んでも置いていかれない。教える側に立った瞬間に届かなくなる層を、ちゃんと分かっている。
③ 耳で聞ける状態を守る
これが一番効いていた。後述する。
前提条件(真似できない部分)
4年ぶん積み上がった「親しみ」です。これは時間でしか買えない。
なぜそう言い切れるかというと、本人がそれを失って失敗しているから。ここが今回いちばんの中身になる。
「撤退します」の回で何が起きたか
この人が、チャンネルの形式を変える実験をした。自分の一人語りをやめて、キャラクターを2人立てて掛け合いにし、ナレーションをプロの声優に差し替えた。
※成功者の失敗から学ぶ視点は、この人でも書いた:「信用してはいけない職業10選」の10位に、自分を入れた人の話
理由も明確だった。台本には自信がある。でも自分の声(滑舌・うるささ)とエンタメ要素が弱点だと思っていた。だから、弱点だけを外注した。
判断としては、まっとうに見える。俺も同じことをすると思う。
結果は大滑りだった。 そして本人が、それを動画にして出した。
失敗の分析が2つに分かれていて、これが正確だった。
①「見当違い」=何を求められているかを取り違えた
視聴者は聞き流していた。だからボケを増やした結果、それが情報収集のノイズになった。
面白くしたのに、面白さが邪魔になった。改善したつもりの部分が、そのまま劣化になっていた。
②「力不足」=守備範囲の外に出た
台本は自分で全部書けた。でも、演出全体をディレクションする能力は無かったと本人が認めている。
ちょっと自分の守備範囲以外のところ、自分の能力以上のところを求めてしまった。
そして一番効いた一行がこれ。
上手さで言ったら声優さんの方が絶対上。でも4年やってきて積み上がった「親しみ」を完全に度外視してしまった。
上手い声に替えたら、下手な声より悪くなった。
これは怖い話だと思う。弱点を正しく特定して、正しく外注して、結果として悪くなっている。全部の判断が個別には正しいのに、合計で間違えている。
俺が持ち帰ったもの
積み上がった時間は、能力で買い戻せない。
※意外な学びがあった話は、両学長でも書いた:両学長の動画を見て、いちばん効いたのは「稼ぎ方」じゃなかった
匿名でやっていると、自分の発信の弱いところがよく見える。文章はもっとうまい人がいるし、話も整理されている人がいる。だから「もっと上手いやり方」に変えたくなる。
でも、読んでくれている人が反応しているのは、上手さじゃない可能性がある。いつもの調子のほうかもしれない。それを外注した瞬間に消える。
これは自分で試して確かめようがない類のもので、他人が失敗してくれたから分かった。
もうひとつ持ち帰ったのは、失敗を出す判断そのもの。この人は、大滑りした企画の2本目を「もう編集が終わっているから」という理由で予定通り公開している。しかも「最後だと思って見て、フィードバックをください」と添えて。
隠せば誰も気づかない失敗を、わざわざ看板にしている。前の記事で書いた基準そのままだった。
その人が「うまくいかなかった」と言った回を探す。
おまけ:この人が紹介していて刺さった一冊分の話
会社員向けに「会社の歯車になれ」と言っている回があった。替えのきかない人材を目指すな、という主張。
反発したくなる話だけど、理由が実務的だった。替えのきかない人が組織の中にいると、既得権益になるから。その人にしか分からないエクセルで売上管理をしている人がいると、全員がその人にお伺いを立てることになる。
そして最後に補足が付いていた。ここが本体だと思う。
ただし、一社だけで機能する歯車になるのは危険。その会社にすがるしかなくなって、しがみつくために既得権益を作りにいく。目指すのは、どこの会社でも回る歯車。
固定費の話とまったく同じ形をしている。選択肢が減ると、人は守りに入って、もっと選択肢を減らす方向に動く。
歯車になれ、の話に見えて、実は「いつでも移れる状態でいろ」という話だった。
次回
【成功例解体】は続きます。次はマコなり社長か、Hormoziあたり。全部見たうえで書ける人からやります。
※【成功例解体】は全10本で完結しました。9人ぶんをまとめて、残った見分け方は1つだけでした:発信者を9人まとめて解体して、見分け方は1つしか残らなかった
