【成功例解体】の7人目。今回はAli Abdaal(アリ・アブダール)。

イギリスの人で、医者をやりながら発信と事業を作って、そのまま独立した。59本ぶんを索引にして上から読んだ。

いちばん引っかかったのは、自分を成功させた習慣を7つ並べて、そのすべてに「これは不健康だった」と添えている回だった。


何をやっている人か(事実だけ)

医学生のころから発信を始めて、研修医として働きながら事業を作り、そのあと医者を辞めた。テーマは生産性・勉強法・働き方。本も出している。

日本の発信と違うのは、成功の手口と、その代金を、同じ画面に並べて出すこと。今回読んだ回がまさにそれだった。


この回の構造

7つの習慣が出てくる。それぞれに利点と代償が必ずセットで書かれている

読んでいて気づいたのは、この回の本体は習慣じゃなくて、請求書のほうだということだった。

① 隙間時間をゼロにする

空き時間があればスマホではなくノートパソコンを開く。奥さんに「安心毛布」と呼ばれるくらい、鞄をどこにでも持ち歩いていた。

代償はこうだった。切り替えられなくなる。

いまはこの人、自分にルールを課している。それが具体的で良かった。

週末は「他人から見て仕事に見えること」をしない。

「仕事かどうか」を自分で判定すると、必ず抜け道を作るからだ。実際この人は「楽しければ仕事じゃない」と自分に言い訳して、一度ルールを破っている。だから判定を自分から取り上げた。

② 常に何かを聴いている ← ここが本題

移動中も、家事中も、寝る前も、ずっとビジネスの話を聴き続けていた。倍速で。

そしてこの人が、いま振り返ってこう言っている。

情報が増えても、前進は増えなかった。

もっと具体的にはこう言っていた。事業が伸びない理由は「まだ知らないことがあるから」だと思っていた、と。だから聴き続けた。どこかに自分がまだ知らない魔法のような考え方があるはずだと思って。

でも実際に効いたのは、そっちじゃなかった。

オーディオブックを1時間聴くより、「いま何が詰まっているのか」を1時間考えたほうが、事業には効いた。

これが「勉強した気になる」の正体だと思う。

インプットは、やっている間ずっと前に進んでいる感覚がある。しかも疲れない。考えるのは疲れるし、進んでいる感じがしない。だから人は、考える代わりに聴く。

しかも厄介なのは、インプットは間違いではないことだ。この人も、知識としては確実に伸びたと言っている。無駄ではなかった。無駄ではないから、やめられない。

③ 他のことを手抜きする

医学部も、研修医の仕事も、この人ははっきり「手を抜いた」と言っている。同期が経歴を積み上げている時間を、全部そっちに使った。

そして、この一行が誠実だった。

自分はこの取引をして良かったと思っている。ただし、これは生き残った側の意見だ。

うまくいかなかった場合、自分は後ろに下がった状態で戻ることになる、とも言っている。成功した側から「賭けろ」と言うときに、負けた場合の位置まで書いている人は少ない。

④ すべてを時給で判断する

自分の時給を決めて、それを下回る作業は捨てる。掃除も外注する。

代償はこうだった。人生の全部が時給で見えるようになる。

友人に会う時間、本を読む時間、遠くまで運転する時間。全部が換算され始める。この人は「そうならないよう意識的に戦っている」と言っていて、克服したとは言っていない


前提条件(真似できない部分)

この人には、戻れる場所があった。

医学生であり、資格を持った医者だった。事業が全部だめでも、医者に戻れば生活は成り立つ。その状態から賭けている。

これは能力の話ではなく、土台の話だ。落ちても死なない高さから飛ぶのと、落ちたら終わる高さから飛ぶのとでは、まったく別の行為になる。同じ「思い切りの良さ」に見えても中身が違う。

だから、真似するなら先に土台のほうを作る。 戻れる場所がないなら、まず戻れる場所を作るのが先で、それは固定費の話とほぼ同じ作業になる。


俺が持ち帰ったもの

インプットは、考えることの代わりにはならない。

この連載を始めたきっかけは、俺自身の疑いだった。動画をたくさん見て、勉強した気になっているだけじゃないのか。 それを確かめるために、まとめて見て、まとめて解体することにした。

7人目にして、いちばん近い答えを、いちばん見ていた側の人が言っていた。足りないのは知識じゃなくて、考える時間のほうだった。

だからこの連載も、危ない。見て、まとめて、出す。それ自体が「進んでいる感じ」を作るからだ。

なので線を引いておく。まとめたら、必ず1つ自分の側で動かす。 今回で言えば、聴く時間を1つ削って、そこで詰まっているものを考える時間に置き換える。それをやらないなら、この連載はただの消費になる。

もうひとつ持ち帰ったのは、この人の締め方

金持ちにする習慣と、幸せにする習慣は、噛み合わないことがある。

そのうえで、季節ごとに戦略は違っていいと置いていた。20代は片側に寄せた。30代は寄せ直している。やめるとも、続けるとも言っていない。配分を変えると言っている。

固定費も、稼ぎも、生活も、全部これでいい気がした。正解を1つ決めて一生守るのではなく、いまの季節に合わせて配分を変える。


次回

【成功例解体】は続きます。全部見たうえで書ける人からやります。

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